コレステロールのコーナー
コレステロールに関連する私の数本のブログ記事<「薬屋のおやじのボヤキ」の中のカテゴリー「 脂質異常症 」>及び最新情報< 2014.8.25日本脂質栄養学会主要メンバーから日本動脈硬化学会への「 コレステロール低下医療に関する緊急提言 」>などを元にして、それらを要約したものを以下に記述することとします。
● はじめに
高コレステロールは一般に恐れられているのですが、これは遺伝的に高コレステロール血症になる極一部の方だけの話でして、一般の方は、逆に、高コレステロールは喜ばしいものとして捉えるべきものです。
要治療対象者は、例えば糖尿病を併発していて、冠動脈の血管壁に血栓が成長中で心筋梗塞の危険が高いといった血流ストップの恐れが大きい場合にあくまで補助的にコレステロール値を下げる必要性が生ずるだけです。
なお、こうした場合においても、私の個人的な意見としては、コレステロール降下剤は使うべきではないと考えています。
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コレステロールは、なくてはならないもの
コレステロールは、健全な細胞膜を作り、各種ホルモンやビタミンDの原料になりますから生体維持に不可欠なものです。なお、血管系に限って言えば、コレステロールが不足すると血管がもろくなり脳出血の危険が大きくなります。
そして、体内に存在するコレステロールの3分の1は脳を含む神経系に集中しており、神経細胞の保護と円滑な信号伝達に寄与しています。
つまり、血液中に十分なコレステロールがあれば、心身ともに健康な体づくりができ、かつ、頭脳明晰・ボケ防止にもなるのです。
なお、コレステロールの量的な最大の働きは、消化に不可欠な胆汁酸に姿を変えることでして、胆汁酸は腸管から約90%が再吸収され、循環して利用されています。
よって、コレステロールの損失は、再吸収されない約10%の胆汁酸が過半で、食事から多く入れば肝臓での体内合成はそれだけ少なくて済みます。
不足するコレステロールは体内合成され、主に肝臓、次に皮膚で多く行われています。皮膚での合成はビタミンDの合成との関わりでそうなっているのですが、皮膚は垢として剥げ落ちますから、これも大きな損失となります。
こうしたことから、コレステロールを多く含む食品を避けたり、胆汁酸の再吸収を阻害するような健康食品を取ることは、いたずらに肝臓に負担をかけているだけで、全くの間違いと言えます。
ただし、コレステロールを多く含む食品は大半が美味なる動物性食品であり、これを多食すれば、たんぱく質やカロリーの過剰摂取という別の大きな問題を生じさせますから、その観点から飽食を戒めねばなりません。
● コレステロールに善玉も悪玉もない
HDLを善玉、LDLを悪玉と通常呼んでいますが、こう呼ばれるようになったわけは、「小粒子のLDLは酸化されやすく動脈壁に張り付きやすい。HDLが多いとそれがどれだけか防げる。」という研究報告からきているようです。
しかし、これは動脈硬化の危険因子の一つに過ぎず、他の要因(高血圧、喫煙、高血糖、運動不足など)が大きいことが既に分かっています。
加えて、血液中のLDLは小粒子ばかりではなく、大きな粒子もあるのですから、一部小粒子の酸化を防ぐ手立て、例えば血液中の活性酸素の除去といった方策を講ずるほうが賢明です。
それと、LDLとHDLの根本的な理解に間違いがあります。LDLは肝臓から全身に輸送される姿であり、HDLは逆のルートで肝臓に戻される姿なのです。
ですから、LDLとHDLは“行って来い”の対の関係になっており、片方を人為的に増やしたり減らしたりすると、どこかで詰まったり、受け入れ先へのコレステロールの供給が途切れたりしてしまうということになりかねません。
● 更年期を過ぎた女性は急激に高くなるのがいい
コレステロールのLDLとHDLは“行って来い”の対の関係にありますから、両者の比率は、消費が多ければ戻りが少なくなりますし、供給が多ければ戻りも多くなりますから、絶えず変化すると考えてよいでしょう。
皆さんが気にされる高LDLは、単に供給力が大きいだけのことであり、その人その人の体質の違いによるところが大きいです。
そして、供給力が大きいということは、需要に十分応えることができるのですから、まことに喜ばしいことです。逆に、低LDLであったらホルモンの生産などに支障をきたすことになりますから、心配せねばならないのです。
女性は更年期になるとホルモンバランスが崩れ、その後安定(体質が変化)することは誰でもご存知のとおりで、このとき、新たなバランスの取れたホルモン生産などを円滑に行いうる十分な量のLDLを供給することが求められ、LDL値が一気に30程度アップするのが普通なのです。
よって、更年期を過ぎてもLDL値が高くならないようであれば、かえって心配せねばならないのです。
● コレステロールの基準値
まず最初に、健康診断の基準値はどのようにして定められるのか、それを踏まえておいていただきたいです。これについては、別ページで本来の基準値はどうやって定められ、それが年齢階層別にどういう数値になっているか、それを「 健康診断 本来の基準値 」として表示しましたのでご覧ください。
ところが、現行の基準値は、血圧もコレステロールも本来の基準値とは全く違った、低い数値に設定されてしまっています。
これは、超肥満がどんどん増えてきた米国の基準値設定の考え方にならったのでしょうが、日本では1980年代に総コレステロールが250~240と定められ、1987年には動脈硬化学会が220に下げてしまいました。
その後、米国で総コレステロールで判断するのではなく、LDLに注目すべきとなったようで、日本もそれにならって今の基準値になったものと思われます。
ところで、米国の基準値設定は、あくまでも過食・運動不足による血管の詰まりによる死亡や後遺症発生を未然に防止するための「要指導対象」の線引きをするためだけのものです。そして、米国では初診料の保険点数が非常に高いですから、血圧も同様ですが、基準値をオーバーした人には医師が懇切丁寧に生活習慣指導を行うだけで、コレステロール降下剤を即投薬し、これをずっと飲み続けさせるなどということは決して有り得ません。
ところが、日本の医療制度は欧米とまるっきり違い、初診料は雀の涙ほどしかありませんから、血圧も同様ですが、検査や投薬の保険点数でちまちま稼ぐしかなく、基準値が下げられたのはモッケの幸いとばかり、“やれ心筋梗塞だ、脳梗塞だ、コレステロール値を下げないと死んでしまう!”と患者を脅しまくり、薬を飲ませ続けるているのです。
世界のコレステロール降下剤生産高の6、7割を日本人だけで、それも大半が更年期すぎの女性が消費しているとのことですから、あきれて物が言えない薬投与であり、クスリ漬けがますますはびこっています。
“日本人は他の人種と違って、皆、特異体質であり、コレステロール降下剤を飲み続けないと、心筋梗塞・脳梗塞でどんどん死んでいく運命にある”とでもいうのでしょうか。
(参考記事) 健康診断の“検査”は“病人”を作り出すだけのもの。特に「血圧」と「コレステロール」が悪質
● コレステロールの基準値改訂の動き
1987年に動脈硬化学会が定めた総コレステロール基準値220の見直しが1999年になされ、同学会は240に戻す寸前までいきましたが、患者が半減してしまうという一部開業医サイドの反対がために潰されてしまいました。
その後においては、「コレステロール値は低ければ低いほどよい」との通説が日米ともに支配し、日本では、コレステロール降下剤として最も多く使われているスタチン(=コレステロール合成阻害薬)が頻繁に投与されてきました。
ところが、米国では、2013年に関係学会などがこの通説は誤りであることを認め、スタチン投与対象者を大幅に絞り込みました。
一方、日本では2014年4月に日本人間ドッグ学会が本来の基準値の出し方で基準範囲なるものを発表しました。これについては、血圧について物議を醸したところですが、コレステロールについては年齢階層別に数値を示し、現行基準と大きな隔たりが生じたものの、さほど騒がれなかった感がします。
次なる動きは2014年8月に、日本脂質栄養学会の元会長ら主要メンバー5名から日本動脈硬化学会に発せられた「コレステロール低下医療に関する緊急提言」(長文で難解な部分も多く、主要な事項を本項及び次項で紹介します。)の公表です。これは、先の米国の動き、人間ドッグ学会の新たな基準範囲などとともに、スタチンの無効性と有毒性を強く訴えかけるものです。
なお、スタチンの有毒性とは「ミトコンドリア毒となり、エネルギー生産を阻害し、全身の細胞が障害を受ける。その結果、糖尿病、神経障害、免疫抑制、発がんを引き起こす元になるし、かえって動脈硬化を促進し、心不全を発症させる。」というもので、実に恐ろしいものです。
あらかた米国追従の日本ですから、日本動脈硬化学会も、米国の方針転換によって外堀が埋められた今、日本脂質栄養学会による内堀攻撃に遭い、今後どう対処していくのか、その動向に注目したいです。
参考までに、この項で取り上げました4機関の基準値の捉え方を下記に示します。(出典:コレステロール低下医療に関する緊急提言)
● 高コレステロール値を喜びましょう
ここまで述べてきましたように、高コレステロールは、何も悲観することはなく、喜ばしいこととして捉えたいものです。
前項に掲げた表の中で、日本脂質栄養学会は「高LDL-C値は長寿の指標」「各種疾患予防にLDL-C値の低下を目標としない」と言っています。
(注:Cはコレステロールの略文字)
「長寿の指標」とされたその根拠は、日本そして欧米各国で行われた数多くの疫学調査で、総コレステロール値が高いほど元気で長生きである、との結果が出ているからです。
ちなみに、ニッポン・データでは総コレステロール値240~260、大阪府では240~280の人たちは死亡率が一番低く、両調査ともにそれより値が低いと、がんの死亡率が高まり、そして自立度も低下することが判明しています。
加えて、総コレステロール値と冠動脈心疾患の発症率に限って、その相関関係をみたのが次のグラフで、偏りのない一般集団にあっては相関関係が全く認められない場合が多く、中には逆相関になるものも少なからずあります。
つまり、驚くことに、「総コレステロール値が高いほど心筋梗塞になりにくい」という、我々が信じさせられている話とは真逆のものさえ幾つもあるのです。
(出典:コレステロール低下医療に関する緊急提言)
(注)標本の取り方が類似している調査は、それらをまとめて平均的な数値でもって図が作成されています。
疫学調査といえども必ずしも公平公正に行われるものではなく、政府や医師会サイドからは、今まで、上の図の赤い線のグラフでもって、コレステロール値を下げよと言われていましたが、これは“裏から木登り”の作為的なものであって、詐欺師もどきの調査です。無視すべきです。
よって、お医者さんに「あなたはコレステロールが高すぎる。放っておくと血管が詰まるよ。」と指摘されても、「だから健康で元気でいられます。心筋梗塞にもなりません!」と言い返す勇気を持ちたいですね。
生活習慣病改善に関しては世界最悪の医療制度の日本ですから、「高LDL、即、スタチン」という殺人鬼もどきの手に絶対にかかってはなりません。
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それでもコレステロール値を低くしたい方に
高度文明社会においては、絶対的に「飽食と運動不足」に陥ります。その結果が高コレステロールとしても現われることがあるでしょう。
その値を気にしなくて良いことは前項までに幾度も書いてきましたが、不条理のこの世の中ですから、メタボ健診で引っかかると何かと不利になり、現行の基準値以下に抑え込まねはならない事情を抱えた方も多いかと存じます。
巷にはコレステロール値を下げるのを匂わせた健康食品が数多く出回っていますが、その効果のほどは甚だ疑問です。市販薬とてそうです。
唯一の方法は、食事の量を減らすことと運動量を増やすしかありません。
血圧については運動が効果的ですが、コレステロールは減食が勝ります。
極端な方法は長期断食で、これをやれば、まず血管壁にこべり付いたコレステロールがエネルギー源になりますし、コレステロールが過剰に存在するという状態は解消されますから、断食後のコレステロール値は低めで推移することでしょう。ただし、断食後に美食に戻れば元の木阿弥となりますが。
(注:長期断食は勝手にやると命取りになり、指導者の下で行ってください。)
いずれにしろ、永続的にコレステロール値を適正値に保つには、減食するしかなく、朝食抜きの1日2食にし、できれば定期的に1日断食を組み込むしかないと思われます。それも、美食を極力避けねばなりません。
これについては、ブログ「薬屋のおやじのボヤキ」のカテゴリー「 朝食抜き・断食で健康 」に幾つかの記事を書いていますが、まずは次の記事を参考になさってください。
(参考記事) 朝食抜き、1日2食で健康!昔は皆がこれで驚くほど元気…
かなりの長文を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
「コレステロールのコーナー」はここまでです。
記事掲載:2015.10.24
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